【書評】短期的利潤追求を超えて「永続経営」を実現する視座――政治と経済をつなげて読み解く『DIMEの力』

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書名:『なぜこれを知らないと日本の未来が見抜けないのか 政治と経済をつなげて読み解くDIMEの力』

著者: 江崎道朗

出版社: KADOKAWA(2023年刊行)

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はじめに:欧米型・短期思考の経営から「永続的な商い」へ

「四半期ごとの決算数字や株主への目先の返還ばかりを追う欧米的なマネジメント」の限界が、さまざまな局面で露呈しています。

本来、日本の商業や経営の美徳は「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」に象徴されるように、「世代を超えて事業を存続させ、従業員や地域社会を守り続けること(永続性)」にあります。

しかし、現代のように国際情勢やグローバル市場が激変する時代において、単に「真面目に良い製品・サービスを提供していれば、商売は安泰だ」という考え方は、あまりにも危険です。自社を取り巻く「政治」や「地政学」の構造変化に疎いままでは、どれほど優良な企業であっても、外部の予期せぬ荒波によって一瞬で足元をすくわれてしまうからです。

今回ご紹介する江崎道朗氏の著書『なぜこれを知らないと日本の未来が見抜けないのか 政治と経済をつなげて読み解くDIMEの力』は、まさに「日本古来の長く息の長い経営を貫くために、事業者が絶対に持っておくべき世界観とフレームワーク」を授けてくれる一冊です。

1. 永続経営を阻む最大のリスク=「経済(E)しか見ない視野狭窄」

なぜ、目先の損益計算書(P/L)だけを見ていると危険なのでしょうか。

欧米的なファンド的思考や短期利益主義は、「安く調達できれば、政治体制や人権問題に課題のある国でも構わない」「効率が最優先だ」と割り切ってサプライチェーンを拡張してきました。しかし、その結果生じたのは、有事の際の部品途絶、技術流出、経済安全保障上の法的規制による事業停止という甚大なリスクでした。

一方で、何十年・百年と暖簾(のれん)を守り抜こうとする日本の伝統的経営においても、「政治や安全保障の話は国や官僚が考えることであり、一企業のビジネスには関係ない」という無関心に陥りがちです。

本書が警鐘を鳴らすのは、「経済(E)の動きだけを追って判断を下す経営は、嵐の海で水温と風速だけを見て航海計画を立てるようなものだ」という事実です。

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2. 国家戦略の枠組み「DIME(ダイム)」とは?

本書の核となる概念が、欧米の安全保障や地政学で用いられる「DIME(ダイム)」という思考のフレームワークです。大国や覇権国家は、自国の利益と産業を守るために、以下の4つの要素を分断させることなく「一つのパッケージ」として連動させて動かしています。

  • D(Diplomacy:外交): 国際的なルール作り、交渉力、アライアンス構築

  • I(Intelligence:情報): 相手の真の意図を読み解く情報収集・分析能力、サイバー防衛

  • M(Military:軍事): 国家の独立を守り、いざという時の抑止力・実力を行使する基盤

  • E(Economy:経済): 市場、通貨、サプライチェーン、技術開発力、産業構造

世界を動かしているプレイヤーたちは、「E(経済)」を単なる市場原理ではなく、「D(外交)・I(情報)・M(軍事)の目的を達成するための重要な手段」として扱っています。

私たちがビジネスを行う市場(E)の裏には、常にD・I・Mの思惑が張り巡らされていることを知らなければ、長期的なリスクを予見することはできません。

3. 日本古来の「長く継続する商い」に、なぜDIMEが必要なのか?

目先の利益を刈り取ってすぐに撤退・転売する短期投資家とは異なり、「事業を次の世代に引き継ぎ、雇用を守り、地域に貢献し続ける」ことを目的とする経営者・リーダーにこそ、DIMEの知識が必要です。その理由は大きく3点あります。

① サプライチェーンと自社技術の保護(経済安全保障への適応)

「安いから」「市場が大きいから」という理由だけで特定の海外拠点に依存し続けるリスクは、もはや許容できません。企業が自社のコア技術の流出を防ぎ、有事でも事業を止めない供給網を再構築すること(経済安全保障推進法への対応)は、現代における「最大の暖簾の防衛策」です。

② 「I(情報・インテリジェンス)」の感度を高める

日本企業は優れたモノづくり(E)を得意としますが、国際政治の裏の思惑やサイバー攻撃、認知戦といった「情報(I)」の領域には無防備になりがちです。真の情報感度を磨くことで、表面的なニュースに惑わされず、手遅れになる前に危険な市場からの撤退や戦略の転換を決断できるようになります。

③ 有事対応は経営者の社会的責任(CSR)である

「国が守ってくれる」という他人任せの時代は終わりました。災害だけでなく地政学リスクまでもBCP(事業継続計画)に織り込み、従業員や取引先を守り抜くこと。それこそが現代における「三方よし」の実践であり、経営者が果たすべき真の社会的責任です。

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4. 本書の章立てと構成

本書は、国家や覇権のメカニズムといった理論から、ウクライナ戦争・台湾有事などのリアルな分析、そして日本企業の具体的実務までをシームレスに解説しています。

  • 第1章〜第3章: 「国家の独立」とは何か、覇権国家の世界観とグランドデザイン

  • 第4章〜第5章: 変容する日米同盟と、ウクライナ戦争・台湾有事を「DIME」で紐解く

  • 第6章〜第7章: 日本企業が知るべき「経済安全保障推進法」と、有事対応という経営責任

  • 第8章〜終章: 日本の安全保障史の試行錯誤と、戦後失われてきた「I(インテリジェンス)」の回復

おわりに:100年企業を目指す経営者のための「羅針盤」

欧米発の短期的な株主資本主義や目先の数字に翻弄される経営から脱却し、日本本来の長期的で強固な事業を構築したいと願う経営者・ビジネスリーダーにこそ、本書はお勧めです。

「政治・安全保障(D/I/M)」と「経済(E)」をつなげて立体的に世界を俯瞰する「DIMEの力」。これこそが、どのような時代的混乱が訪れようとも暖簾を守り抜き、日本の未来と自社の事業を力強く拓いていくための「真の羅針盤」となるでしょう。

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