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『歴史から観る中国の正体』宮脇淳子著|僕たちが信じ込まされてきた「中国4000年」の罠と、日本人が知るべき解毒剤

「中国には4000年を超える連続した歴史と伝統がある」 「古代の中国人は徳にあふれ、洗練された文明人だった」

私たちが学校の授業や漢文、歴史ドラマなどを通してなんとなく抱いているこの「中国観」。もしこれが、日本人が都合良く美化し、そして近代中国自身が作り出した“フィクション(物語)”だとしたらどうでしょうか?

東洋史学者・モンゴル史の権威である宮脇淳子先生の著書『歴史から観る中国の正体』(徳間書店)は、まさに僕たちの脳内にへばりついた歴史の「幻想」を根底から解き放ってくれる、極めて刺激的な一冊です。

かつて小林よしのり氏の『戦争論』がそれまでの戦後歴史観の前提をひっくり返したように、本書もまた、「中国の歴史認識の政治利用」に対抗し、日本の保守や歴史ファンが新たな視点(メタ視点)を獲得するための強力な糸口になり得ます。

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1. 僕たちが憧れた「古代中国」は、日本人の“二次創作”だった

日本人が昔から抱いてきた「中国文明へのうっすらとした崇拝やコンプレックス」。その正体を本書は鮮やかに解剖します。

私たちが学んできた孔子や諸葛孔明といった「徳のある聖人君子」のイメージ。実はあれ、江戸時代の儒学者や明治・大正期の日本人訳者たちが、日本人自身の倫理観や美的感覚というフィルターを通して美化し、超訳したものに過ぎません。

実際の中国大陸の歴史は、易姓革命による凄惨な王朝交代と、異民族による過酷な支配の連続でした。日本人は「自分たちの道徳基準」で中国の古典を解釈し、「素晴らしい文明国だ」と思い込んできたのです。

2. 「中国4000年の歴史」は、大正時代の留学生が日本で作った!?

さらに驚かされるのが、「中国4000年の歴史」という概念そのもののルーツです。

1912年の辛亥革命によって「中華民国」が誕生するまで、あの地に「中国」というひとつの国民国家は存在しませんでした。そこにあったのは、モンゴル帝国(元)や満州族の帝国(清)といった、北方遊牧民が漢族を支配する多民族帝国です。

では、なぜ「4000年の連続した歴史」という話になったのか?

実に興味深いことに、明治・大正期に清国から日本へやってきた留学生たちが、日本の「皇紀2600年」や西洋の万国史の概念に衝撃を受け、「自分たちにも日本のような一貫した誇りある歴史が必要だ」と焦って組み立てたストーリーだったと指摘されています。作成当初は日本より多くするために3000年でした。それが年々年数が増えていっています。

「中国は昔から大国だった」という相手側の土俵に乗って議論する前に、そもそもその「前提」自体が日本発の近現代の産物だったという事実は、まさに保守層であっても目から鱗が落ちる体験となるはずです。

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3. 「毒を以て毒を制する」——真の解毒作用と保守への糸口

本書で展開される宮脇先生(そして夫である故・岡田英弘先生)の「ユーラシア史観」は、きわめて強烈です。学術的な通説から見れば論調が鋭すぎる部分もありますが、自国の都合に合わせて歴史を「政治ツール」として利用する中国に対し、この強い史観はまさに特効薬(抗体)と言えます。

日本の保守論壇ではよく「自虐史観からの脱却」が叫ばれます。しかし、その手前にある「中国文明に対する無意識のコンプレックス(崇拝)」を解消しない限り、本当の意味で対等な歴史観・地政学観は持てません。

相手のプロパガンダを切り捨てるだけでなく、中央ユーラシアという広い視野からその「裏側の構造」を読み解く思考法を、本書は提示してくれます。

おわりに:一度、頭の中の歴史図式を崩してみよう

もちろん、本書の主張だけを絶対視して「中国の言っていることはすべて嘘だ」と単純化してしまうのは危険です。しかし、『戦争論』が当時の読者の覚醒を促したように、本書もまた「信じ込まされてきた前提を疑い、自分たちの頭で歴史の裏側を捉え直す」ための最高の覚醒書になります。

連日のニュースで流れる中国の強硬な外交姿勢や歴史認識の主張に「何か根本的な違和感がある…」と感じている方にとって、これ以上ない「目覚まし薬」となるでしょう。ぜひ手に取って、歴史の本当のスケール感を体感してみてください。

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