現代の日本政治や行政に対して、こんな虚しさを覚えたことはないでしょうか。
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「誰も傷つけない、効果も怪しいバラマキや事業ばかりが優先される」
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「減税と言っていた政治家が、風向きが変わるとすぐ『給付金』に日和る」
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「現場のプロの仕事よりも、上司や議会のアリバイ作りが最優先される」
保身とポピュリズムが横行し、決定力を欠いた現代日本。この「事なかれ主義の停滞」を突破するための強烈な処方箋となるのが、憲政史家・倉山満氏の著書『日本史上最高の英雄 大久保利通』です。
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1. 大久保利通はなぜ「史上最高の英雄」なのか?
一般的に「明治維新のヒーロー」と言えば、情に厚く人気のある西郷隆盛や、アイデアマンの坂本龍馬が挙げられがちです。一方で大久保利通は、「冷酷」「独裁者」「嫌われ役」といった陰惨なイメージで語られることが少なくありません。
しかし本書で倉山氏は、「西郷は維新を興した男だが、大久保は国家を創り上げた男だ」と断言します。
欧米列強による植民地化の危機が目前に迫る中、大久保が断行したのは、生半可な覚悟では不可能な国家基盤の構築(富国強兵)でした。
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地租改正(国家財務の基盤づくり)
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徴兵制の導入(武士階級の解体と国民皆兵)
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殖産興業(インフラ・産業の官民育成)
これらはすべて、当時の国民や特権階級(士族)から猛烈な反対と憎悪を買う施策でした。しかし大久保は、「今ここで痛みを伴う改革を完遂しなければ、日本は欧米の奴隷になる」という冷徹な地政学的リアルを見据え、自らの命を的に回してでも断行したのです。
2. 親友・西郷隆盛を討ってまで守った「国家の骨格」
本書の最大のハイライトは、幼馴染であり維新の最大の功労者であった西郷隆盛との決裂(征韓論争・西南戦争)の描き方です。
感情や「仲間の情」を優先すれば、西郷の士族救済論(不平士族の不満を外に向けさせる構想)に流される方がはるかに楽だったはずです。しかし大久保は、「今海外と戦争をすれば、国家の財政が破綻し、明治政府そのものが倒れる」と判断。盟友・西郷を排除し、最終的には軍事力で鎮圧する道を選びました。
「嫌われてもいい、憎まれてもいい。100年後の日本が生き残るためなら、鬼になる」
大久保にあったのは、私腹を肥やす野心ではなく、「歴史の法廷に立つ覚悟」でした。実際に暗殺された際、大久保の遺産はほぼゼロどころか、国家事業の穴埋めに私財を投げ打っていたため巨額の借金しか残っていませんでした。
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3. 現代の政治・行政に決定的に欠けているもの
本書を読み進めるうちに突きつけられるのは、「では、今の日本に大久保利通のような政治家やリーダーがいるか?」という問いです。
現代の行政現場では「効果はどうでもいいからアリバイ作りの実績が欲しい」「クレームが出ないことが第一優先」という事なかれ主義が蔓延しています。政治の世界でも、「そもそも税金を取らない(減税)」と言っていた政治家が、選挙情勢や批判を恐れて急に「給付金を配る」と言い出すような、信念なきポジショントークが目立ちます。
なぜそうなるのか。それは政治家も官僚も、「嫌われるリスクを冒して責任を取るくらいなら、国民に耳ざわりの良いことを言って目先の評価を得る方が得だ」という構造の中にいるからです。
おわりに:私たちが学ぶべき「リアリズム」
大久保利通の生き様は、私たちに「真のリーダーシップとは何か」を強烈に示してくれます。
それは、SNSで喝采を浴びることでも、耳ざわりの良い給付金を配ることでもありません。「批判や嫌悪を一身に受け止めてでも、真に必要な構造改革(税負担の軽減や規制緩和、無駄な行政介入の縮小)を断行する冷徹な信念」です。
「情」や「空気」に流されて国を滅ぼしかけた明治初期に、一人で冷徹な「リアリズム」を貫いた大久保利通。
行政の事なかれ主義や、政治家のポピュリズムに違和感と憤りを覚えているすべての人に、今こそ手に取ってほしい名著です。

